ACHIEVEMENTS
a
ACHIEVEMENTS研究成果
ACHIEVEMENTS
プレスリリース
2019.05.10
大阪大学蛋白質研究所の高木淳一教授のグループは、ヒトを含むあらゆる多細胞生物の発生と組織形成に必須であるタンパク質、Wnt(ウィント)を受容体との複合体の状態で結晶化し、その立体構造を解明しました。
Wntは細胞に作用してその細胞の運命を制御する分泌タンパク質であり、がんや骨粗鬆症を含む、様々な疾患に関わっていますが、その「水に溶けない」性質のために大量の組み換え発現や精製が難しく、これまでヒトや哺乳動物由来のWntについては立体構造情報が得られていませんでした。
高木淳一教授と平井秀憲元特任研究員、有森貴夫助教らは、ヒト由来Wnt3タンパク質を水に溶かすために様々な工夫を施し、細胞上の受容体であるFrizzled8(Fz8)の断片を大量に同時発現することで安定なWnt3-Fz8が得られることを発見しました。さらに、今まで知られていなかったWnt3中の疎水性領域を意図的に欠失させることで水溶性で安定なWnt3-Fz8複合体を得てこれを結晶化し、大規模放射光施設SPring-8の蛋白質研究所ビームライン(BL44XU)における回折実験を経て、その原子分解能(2.9Å)での構造決定に成功しました。
明らかになったWnt3-Fz8複合体の構造から、Wntタンパク質が分子内に備えている様々な「しかけ」が明らかになり、これによってWntが幹細胞に増殖シグナルを伝えるメカニズムの解明が進んだことは、再生医療研究を加速するものとして注目されます。
本成果は英科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」に2019年4月29日付け(英国標準時間16:00pm、日本時間30日1:00am)で掲載されました。
【本件に関する問合せ先】
大阪大学蛋白質研究所 分子創製学研究室
教授 高木淳一(たかぎじゅんいち)
TEL:06-6879-8607
FAX:06-6879-8609
E-mail: takagi[at]protein.osaka-u.ac.jp